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横浜地方裁判所 平成4年(行ウ)25号 判決

原告

榎本義雄

(ほか五五三名)

右原告ら訴訟代理人弁護士

藤沢抱一

新美隆

右原告永田親義訴訟代理人弁護士

小川佳子

被告

(横浜市長) 高秀秀信(Y1)

(横浜市道路局長) 立神孝(Y2)

(横浜市環状道路等担当部長) 渡邊友孝(Y3)

右被告ら訴訟代理人弁護士

村瀬統一

栗田誠之

事実及び理由

第三 当裁判所の判断

一  争点1(訴権濫用の有無)について

被告らは、本件訴えは、地方財務行政の適正化という住民訴訟制度本来の目的のため提起されたのではなく、道路建設計画に対する反対運動の一環として提起されたものであるから、住民訴訟制度の趣旨、目的を逸脱するものであり、訴権の濫用に当たると主張する。しかし、たとえ本件訴訟が道路建設計画の反対運動の一環として提起されたものであるとしても、本件訴訟は、その主張から明らかなように、虚偽のパンフレットの製作配付によって、地方公共団体が損害を受けたとして、その回復を求めるものであり、地方財務行政の適正化を図ることを意図した側面もあるから、これをもって訴権の濫用に当たるとすることはできない。

二  争点2(被告渡邊の被告適格の有無)について

1  本件は、原告らが、本件各契約の締結及びこれに基づく公金の支出について、被告らが違法な財務会計上の行為を行ったとして、地自法二四二条の二第一項四号に基づき、神奈川県に代位して行う損害賠償の請求であるところ、かかる請求において、同号にいう「当該職員」とは、当該訴訟においてその適否が問題とされる財務会計上の行為を行う権限を法令上本来的に有するとされている者及びこれらの者から権限の委任を受けるなどして右権限を有するに至った者を広く意味し、他方、およそ右のような権限を有する地位ないし職にあると認められない被告として提起された同号所定の「当該職員」に対する損害賠償の請求にかかる訴えは、地自法により特に出訴が認められた住民訴訟の類型に該当しない訴えとして、不適法と解される。そして、右の「当該職員」には、当該普通地方公共団体の内部において、訓令等の事務処理上の明確な定めにより、当該財務会計上の行為につき法令上権限を有する者からあらかじめ委任ないし専決することを任され、右権限行使についての意思決定を行うとされている者も含まれると解される。

2  ところで、原告らは、本件訴訟において、違法な財務会計上の行為として、本件各契約の締結及びこれに基づく公金の支出命令と公金の支出を掲げるので、本件訴訟においてその適否が問題とされている財務会計上の行為は、右の三つの行為であるとの前提の下に、被告渡邊について検討するに、〔証拠略〕によれば、横浜市事務決裁規程(昭和四七年八月二八日制定)三条一項別表第1の5の「部長専決事項」欄(7)は、一件一〇〇〇万円未満の物品・労力その他の調達等の決定に関する予算の執行にかかる事項は部長の専決とする旨定め、さらに六条(1)号は、内容が特に重要であると認められる事項は、三条の規定にかかわらず、市長の決裁事項又は上司の専決事項とする旨定めていること、本件各契約の締結は、内容の重要性に鑑み、右六条(1)号の規定により、いずれも道路局長である被告立神の専決により行われたこと、右規程第三条一項別表第1の8の「課長専決事項」欄(4)によれば、支出命令は庶務担当課長の専決とする旨定められていることがそれぞれ認められる。

右事実と、支出命令に基づく支出が地自法上、出納機関である出納長又は収入役によって行われるものとされていることに照らせば、当時横浜環状道路等担当部長であった被告渡邊は、法令上本来的に本件財務会計上の行為を行う権限を有する者ではなく、また、これらの者から権限の委任を受けるなどして右権限を有するに至った者でもないというべきであるから、地自法二四二条の二第一項にいう「当該職員」に該当せず、本件訴訟の被告適格を有しないものといわなければならない。

なお、〔証拠略〕によれば、被告渡邊は、本件パンフレット一の製作及び配布の業務委託契約締結の執行伺に、横浜環状道路等担当部長として押印していることが認められるけれども、このような執行伺に押印し、その専決の過程に関与したとしても、それ自体は専決者を補助する者として押印したに過ぎないものと認められるから、そのことから、被告渡邊が、地自法二四二条の二第一項四号にいう「当該職員」に当たることになるものではない。

したがって、被告渡邊の被告適格に関する被告らの主張は、理由がある。

三  争点3(監査請求期間徒過の有無)について

1  地自法二四二条二項の監査請求期間遵守の有無は、監査請求の対象とされた各個の財務会計上の行為ごとに判断すべきものと解されるところ、本件においては、本件各契約の締結が違法であり、したがって、右契約に基づく公金の支出も違法であるとして監査請求がされているのであるから、業務委託契約の締結については契約の締結日から、また、公金の支出についてはその支出日からそれぞれ監査請求期間を起算すべきである。ところで、前記のとおり、本件パンフレット一については、その製作及び配布の業務委託契約は平成三年四月三〇日に締結され、それに基づく公金の支出は同年七月一二日に行われたのに対し、原告らが本件監査請求をしたのは平成四年七月二二日であるから、本件パンフレット一に関する監査請求は、地自法二四二条二項に定める監査請求期間を徒過したものであることが明らかである。

2  そこで、右の一年の期間内に監査請求がされなかったことについて、原告らに地自法二四二条二項但書にいう「正当な理由」が存在したかどうかについてみるに、前記争いのない事実と〔証拠略〕によれば、以下の事実が認められる。

(一)  横浜市道路局は、昭和六三年ころ以降、建設省や道路公団等とも協議調整を重ねた上、高速横浜環状南線の都市計画原案の策定作業を進め、平成二年夏ころ、その都市計画原案を策定した。この都市計画原案において、本件区間は地表式とされていた。

(二)  横浜市は、この都市計画原案を住民に周知するため、平成二年八月二〇日から同年九月二六日までの間、二区七会場で合計一四回、事前説明会を開催し、同年一一月六日から同月九日までの間、二区二会場で合計三回、第一回相談コーナーを設け、平成二年一二月一二日から同月一八日にかけて、三区七会場で合計七回にわたり、都市計画原案の説明会を開催し、同月一四日から同月二八日までの間、横浜市役所において本件都市計画原案を任意縦覧に供し、同月一五日から平成三年一月二六日までの間、三区三会場で、区役所での原案の図面掲示を行った。また、横浜市は、平成三年一月一二日から同月一九日まで、二区二会場で合計三回、第二回相談コーナーを設け、さらに、同年五月二二日から同月二五日までの間、二区二会場で合計三回、第三回相談コーナーを設けた。このうち、平成二年八月ないし九月開催の事前説明会は非公式のものであったし、同年一二月開催の都市計画原案の説明会は公式のものであったが、ほとんどが計画に反対する住民の強い抵抗により、事実上、流会ないし開催不能という結果に終わった。

(三)  このような説明会等においては、会場に、縮尺二五〇〇分の一の計画平面図と縮尺一〇〇〇分の一の計画平面図が掲示された。このうち、非公式の事前説明会と第一回相談コーナーの会場において掲示された計画平面図(縮尺二五〇〇分の一)〔証拠略〕には、本件区間は「平面」と記載されていた。また、任意縦覧に供された計画平面図(縮尺二五〇〇分の一)には、本件区間の道路構造を示す記載はなかった。そして、都市計画原案の説明会、都市計画原案の任意縦覧、都市計画原案の図面掲示、第二、三回相談コーナーの会場において掲示された計画平面図(縮尺一〇〇〇分の一)(〔証拠略〕)には、他の区間で記載されている地下式等の道路構造の表示(いわゆる旗上げ)が本件区間では記載されていなかった。

(四)  また、前記の説明会等において、住民に配布されたパンフレット等のうち、平成二年一二月配布の小冊子「横浜国際港都建設計画道路 高速横浜環状南線」(横浜市、建設省及び日本道路公団の共同発行、〔証拠略〕)には、釜利谷ジャンクションの平面図が記載され、そこには本件区間の道路構造が「地表式」と表示され、また、これとは別に、釜利谷ジャンクションの完成予想図が絵図で記載されていた。しかし、平成二年八月配布の「首都圏中央連絡自動車道」と題するパンフレット(横浜市、建設省及び日本道路公団の共同発行、〔証拠略〕)、同年一二月配布の「高速横浜環状南線」と題するパンフレット(同、〔証拠略〕)、平成三年八月配布の「人にやさしく、街に調和する、高速横浜環状南線。」と題するパンフレット(同〔証拠略〕)には、高速横浜環状南線の縦断図が記載されたが、そこには、本件区間を含めて、釜利谷ジャンクションから神戸橋交差点までの区間が「地下式」と表示されていた。

(五)  その後、横浜市は、前記のとおり、都市計画原案を住民に周知するため、新聞折込の方法で、平成三年五月に本件パンフレット一を、同年九月に本件パンフレット二を配布したが、両パンフレットには、高速横浜環状南線の道路縦断図が記載され、そこには本件区間を含めて釜利谷ジャンクションから神戸橋交差点までの区間が「地下式」と表示されていたほか、本件パンフレット一には、道路構造を併記した高速横浜環状南線の平面図が記載され、そこには、本件区間を含む釜利谷ジャンクションから神戸橋交差点までの区間が「地下式」と表示され、また、本件パンフレット二には、道路予定地の航空写真図が掲載され、そこには、右と同様、本件区間を含む釜利谷ジャンクションから神戸橋交差点までの区間が「地下式」と表示された。

(六)  ところで、平成四年六月七日から同月一三日にかけて、三区五会場で開催された神奈川県主催の環境アセスメント説明会で配布された「環境影響評価の概要」(神奈川県作成、〔証拠略〕)においては、本件各パンフレットと同様の道路縦断図のほか、道路構造を併記した道路平面図が記載され、その平面図に本件区間が「地表式」と表示されていた。このため、六月一三日の説明会において、出席していた一部住民から、本件区間は地表式と地下式のいずれであるかという質問が出て、主催者側が地表式であると答える場面があった。原告らは、このような質疑応答から、本件区間が地表式として計画されていることを知り、同年七月二二日、横浜市監査委員に対し、被告らが本件各パンフレットに高速横浜環状南線の道路構造に関し事実と異なる内容を記載して配布し、無駄な費用を支出したとして、その費用の賠償等を求める本件監査請求を行うに至った。

以上のとおり認められ、これを覆すに足りる証拠はない。

3  右認定の事実によれば、原告ら住民は、公式な説明会において、本件都市計画原案の内容を知る機会が事実上なかったといえる上、都市計画原案の任意縦覧の際にも、本件区間の道路構造を正確に知ることができなかったことに加えて、横浜市から、本件区間も含めた釜利谷ジャンクションから神戸橋交差点までを「地下式」と表示した、前記パンフレットや本件各パンフレットの配布を受けていたのであるから、平成四年六月の神奈川県主催の環境アセスメント説明会で配布されたパンフレット(「環境影響評価の概要」)に接するまでは、相当の注意力をもってしても、本件区間が実際は地表式として計画されていること、したがって、本件パンフレット一には、本件区間を「地表式」と表示すべきところを、これを含めた釜利谷ジャンクションから神戸橋交差点までを一括して「地下式」と表示した誤りのあることを知り得なかったものというべきである。そして、原告らは、それに気付いた約一か月後に、本件監査請求をしているのであるから、原告らには、本件パンフレット一に関する監査請求期間を徒過したことについて、地自法二四二条二項但書にいう「正当な理由」があったものというべきである。

被告らは、原告ら住民は説明会等の会場で掲示された図面で本件区間が地表式であることを知り得たはずであると主張し、なるほど、前記のとおり、平成二年八月ないし九月開催の事前説明会及び同年一一月開催の第一回相談コーナーにおいて、会場内に掲示された計画平面図(二五〇〇分の一)には、本件区間が「平面」と表示され、また、同年一二月開催の説明会では、本件区間を「地表式」と表示した平面図と、釜利谷ジャンクションの完成予想図を絵図で記載した小冊子(「横浜国際港都建設計画道路 高速横浜環状南線」)が配布されていることなどが認められるけれども、事前説明会は非公式なものであったし、また、相談コーナーも一部住民に対するものであった上、平成二年一二月に開催された公式の説明会は、そのほとんどが住民の反対により事実上流会に終わっていることなどからすると、原告らが相当の注意力をもってすれば、これらの図面ないしは小冊子などによって、本件区間の道路構造を知り得たということはできない。また、本件区間は釜利谷ジャンクションの一部であるが、ジャンクションであるからといって地表式とは限らないから、このことから原告ら住民が本件区間を地表式と認識し得たということもできない。

四  争点4(本件財務会計行為の違法性の有無)について

1  〔証拠略〕によれば、以下の事実が認められる。

(一)  横浜市は、前記のとおり、高速横浜環状南線の都市計画原案を住民に周知し、理解と協力を得るため、新聞折込の方法でパンフレットを配布することにし、平成三年五月二九日本件パンフレット一を、同年九月六日本件パンフレット二を配布したが、このうち、本件パンフレット一は、四面からなり、一面には高速横浜環状南線計画の必要性とその縦断図が記載され、見開きの二面、三面にはその平面図が記載され、四面にはこれが環境に与える影響と予測結果が記載された。そして、このうちの縦断図には、道路構造が併記され、どの区間がどのような道路構造になるのかが一見して分かるようになっており、本件区間を含む釜利谷ジャンクションから神戸橋交差点までの区間は「地下式」と表示されていた。また、このうちの平面図も道路構造を併記したもので、縦断図と同様、本件区間を含む釜利谷ジャンクションから神戸橋交差点までの区間は「地下式」と表示されていた。また、本件パンフレット二は、同様に四面からなり、一面には高速横浜環状南線計画と自然環境保護との関係が記載され、見開きの二面、三面には道路の縦断図と道路予定地の航空写真とが記載され、四面には高速横浜環状南線が動物保護や周囲の景観に与える影響についての記事が記載された。この縦断図と航空写真にも、道路構造が併記され、本件区間を含む釜利谷ジャンクションから神戸橋交差点までの区間は「地下式」と表示されていた。

(二)  このように、本件各パンフレットにおいて、本件区間の道路構造が右のように表示されたのは、横浜市の横浜環状道路等担当の職員が、前記の「首都圏中央連絡自動車道」と題するパンフレット(〔証拠略〕)や、「高速横浜環状南線」と題するパンフレット(〔証拠略〕)の道路縦断図等の記載をそのまま踏襲し、本件区間を含めて釜利谷ジャンクションから神戸橋交差点までは地下式であるという前提でその草稿を作成し、これを印刷業者に回し、校正の段階でもこれが訂正されずに、そのまま住民に配布されたことによるものであった。なお、本件各パンフレットにおいては、本件区間の道路構造の表示のみに右のような問題があり、他の区間については、二〇〇メートル未満の区間も含めて、すべて都市計画原案のとおり正しく表示されていた。

(三)  ところで、高速横浜環状南線は、その多くが市街地を走ることから、計画当初の段階から関係住民の反対が強く、昭和六三年ころから、各地区で有志による反対の会が結成され、活発な反対運動が展開されてきた。中でも住民の関心は主として公害問題で、高速横浜環状南線が建設されることによって、騒音、振動、空気の汚染等が生ずることを懸念するものであった。そして、その関係で、周辺住民は、高速横浜環状南線の位置、規模についてはもとより、これが地下式になるのか地表式になるのかといった道路構造の点についても強い関心を寄せていた。とりわけ、釜利谷ジャンクションに近い横浜市栄区庄戸地区に居住する住民は、庄戸地区を走る計画道路を地下式にするよう求めていた。このような中で、住民は、本件各パンフレット等に、釜利谷ジャンクションから神戸橋交差点にかけての区間が地下式と表示されていたことから、これに安堵し、反対運動を取りやめる者もいた。しかし、原告らは、平成四年六月、神奈川県主催の環境アセスメント説明会で、本件区間の道路構造が、本件各パンフレットの表示とは異なり、地表式であることを知り、これを監査請求等で指摘するようになった。横浜市の横浜環状道路等担当の職員は、このような原告らの指摘を受け、初めて本件各パンフレットに右のような問題があることを知った。

以上のとおり認められ、右認定を覆すに足りる証拠はない。

2  右認定の事実によれば、本件都市計画原案は、本件区間を地表式としていたのに、本件各パンフレットの道路縦断図や平面図、航空写真図には、本件区間の道路構造が「地下式」と表示されていたのであるから、その記載には、道路構造の表示に関し一部誤りがあったといわなければならない。被告らは、このような誤りも行政の裁量の範囲内であり、許されるかのように主張するけれども、本件のような道路計画案の広報にあたり、これをどのように表示して住民に周知するかについては行政の裁量に委ねられている問題であるとしても、道路構造等については、周辺住民も高い関心を寄せているのが通常であるから、これを公報パンフレットに表示する以上は、パンフレットという限られた制約の中で、できる限り正確にこれを表示することが要求されていると解すべきであり、本件のように、一つの図に、一部の区間は誤りなく道路構造を表示し、一部の区間は簡略にこれを表示するというようなことは、行政の裁量として許されるものではないというべきである。

3  ところで、原告らは、右のような本件各パンフレットの誤りは、被告らが、住民の反対運動を弱めるため、意図的にしたものであると主張するが、前記認定のとおり、横浜市は、事前説明会の会場に掲示した計画平面図(二五〇〇分の一)では、本件区間を「平面」と表示し、平成二年一二月開催の説明会の会場で配布した小冊子には、本件区間を「地表式」と表示しているのであるから、本件各パンフレットの誤りは、前に出されていたパンフレットをそのまま踏襲したことによる誤りによるものと推認され、住民の反対運動を弱めるためにした意図的なものであるとは認め難い。このことは、横浜市の職員が、原告らから本件各パンフレットに前記のような誤りがあることを指摘されて、初めてこれに気付いたことからも窺うことができる。

原告らは、このように一部誤った表示のあるパンフレットを製作配布したことは、意図的でないとしても、許されず、地自法二条一三項等に違反した違法があると主張するので検討するに、なるほど、このようなパンフレットをことさら虚偽の情報を流す目的で製作配布したり、あるいは、パンフレットに誤った情報を記載した結果、これを配布した意味が全く失われたような場合は、無駄に経費を支出したことに当たるから、地自法二条一三項、地方財政法四条一項違反等の問題が生ずるものといわなければならない。しかし、本件の場合、前記のとおり、ことさら虚偽の内容の情報を流す目的で誤った内容を記載したものとは認め難いし、また、本件各パンフレットは、前記認定のとおり、高速横浜環状南線の計画を多面的な角度から紹介し、住民の理解を得ることを目的として製作されたものであるところ、その一環として紹介された道路構造の表示に一部誤りが存在したことは前記庄戸地区の住民にとっては少なからぬ意味を持つとしても、全体としては、右のようなパンフレットの製作配布の目的は達成されたといえ、およそ無駄に経費を支出したとまではいえないから、そこに地自法二条一三項、地方財政法四条一項違反があるということはできない。また、本件は、前記のとおり、意図的に行われたものとは認め難いから、本件各契約の締結に地方公務員法三〇条、三五条違反があるものともいえない。

なお、原告らは、本件各パンフレットの製作配布には、地自法二条一五項違反が存在すると主張し、その前提として、本件のような誤ったパンフレットの製作配布は都市計画法一七条違反に当たると主張するが、本件各パンフレットが同条にいう「部市計画の案」に当たらないことは明らかであるし、憲法九四条違反の主張も、これが地方公共団体の一般的権能を定めた規定に過ぎないことからして、失当であることは明らかである。

4  以上によれば、本件財務会計上の行為に原告らの主張するような違法があるものとはいえないから、その余の点について判断するまでもなく、原告らの請求は理由がない。

五  結論

よって、原告らの被告渡邊に対する訴えは不適法であるからこれを却下し、被告高秀、同被告立神に対する請求はいずれも理由がないからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法七条、民事訴訟法八九条、九三条一項本文を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 浅野正樹 裁判官 近藤壽邦 近藤裕之)

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